(株)FIJの岩井です。
店舗の売却やリーシングに携わっていると、時として「理論」や「経験則」を超えた結果に出会うことがあります。
今回は、地元を知る私ですら「これは流スタンスに無理だ」と匙を投げかけた、埼玉県北部の田舎町にある店舗が成約に至った実録をお話しします。
ネットに載せて引きが来るまでの「運」と、そこから契約まで引きずり込む「ロジック」の境界線についてです。
- 立地ゼロの地方店舗でも、全国プラットフォームの活用で「運(マッチングの分母)」を最大化できる。
- 買い手の不安を払拭する最強のロジックは、「家賃10万円なら失敗しても致命傷にならない」という生存戦略。
- マッチング自体は「運」だが、そこから店舗売却の成約に導くのは客観的数字を用いたプロの「経験と実務」。
1. 地元民の私ですら絶句した「立地ゼロ」の地方店舗の現実
依頼を受けて向かった現場は、埼玉県北部の郊外。隣はすぐ群馬県というエリアです。
ロードサイドといえば聞こえはいいですが、幹線道路を一本外れた市道沿い。周囲に住宅街はなく、視界に入るのは川と畑、そしてポツンと立つラーメン屋の居抜き店舗でした。
正直に言いましょう。「なぜこんな場所で店を?」と、地元で生まれ育った私ですら首を傾げたくなるような立地でした。
地元の不動産屋なら「タダでも厳しい」と一蹴するレベルです。私自身も、担当した営業マンには「正直、成約は絶望的だ。期待しすぎるな」とはっきり伝えていました。
当時の私の本音が、このポストです。
埼玉北部の郊外、正直「絶対無理だ」と思っていた案件が決まった。
— (株)FIJの中の人|サブリース歴15年の営業本部長(元ノンバンク支店長) (@FIJ_eigyou) December 12, 2025
買い手様は中部からの移転。 我々が懸念する立地も、外から見れば「関東の拠点」になり得る。
需要の所在は読み切れない。 経験則だけで可能性を閉ざしてはいけないと、改めて痛感した。#店舗売却
2. 居抜き店舗売却の「運」を捕まえるため、分母を全国に広げる
以前の記事(店舗売却会社はどこを使っても同じ?)でもお伝えした通り、店舗の賃貸借契約や仲介において、物件をポータルサイトに載せるという作業自体は、どの業者に頼んでも大差ありません。
しかし、私たちはプロとして「分母」を最大化することを徹底しました。
地元の狭いネットワークで買い手を探すのをやめ、飲食店ドットコムなどの全国プラットフォームへ投下したのです。
結果、ヒットしたのは中部地方から「関東へ進出したい」と願う一人の買い手様でした。
その方が、自分の故郷と似た風景をその物件に見出したのは、100%の「運」です。
ですが、ネットを使って全国一億数千万人の市場に晒すという「アクション」を起こさなければ、その運を捕まえることすらできなかったのも事実です。
【解決策】「家賃10万円」という最強の生存戦略
買い手様は、全く知らない土地での挑戦に大きな不安を抱えていました。
ここで、私が現場の営業マンに授けたのは、非常にシンプルかつ冷徹なロジックです。
「ここは家賃が10万円ちょっとだ。厨房設備もそのまま使える。もし立ち上がりが遅くても、固定費がここまで安ければ致命傷にはならない。『店舗が軌道に乗るまで、時間がかかっても問題ない』、これ以上のインセンティブがあるか?」
これが家賃50万円、100万円の都内一等地であれば、毎月の支払いに追われ、売上が数%落ちるだけで即廃業の危機に直面します。しかし、家賃10万円なら「耐える」ことができる。
「立地が厳しい物件」を、「極限までリスクを抑えたスモールスタート用の安全装置」として再定義したのです。
【結論】マッチングは「運」、店舗売却の成約は「経験」
私のこのロジックを、営業マンが現場で買い手様にぶつけました。
「関東進出」という夢と、現実的な「リスク管理」。この2つを「家賃10万円」という具体的な数字で繋いだことで、買い手様は前向きに決断されました。
物件をネットに出して誰かが食いつくまでは「運」です。
ですが、そこから先がプロの仕事です。自社のスタンスを売り込み、客観的な数字で物件の価値を再定義し、客の背中を押せるか。その「経験」と「マッチングの精度」が、成約という結果を分けるのだと改めて痛感しました。
【追記:この物語には、私すら予想しなかった「続き」がある】
この成約劇のあと、店舗を手放して人生の節目を迎えたはずの売り手オーナーから、意外な連絡が入りました。
「御社で働かせてほしい」というのです。
正直に言えば、最初は聞き流していました。求人など出していないし、そんな枠もない。
だが、彼はそこから、私たちが「営業マンとして最も重要視するあるアクション」を起こし、自らその門をこじ開けてきたのです。
実は、現在当社で活躍している別の女性社員も、全く同じ「アクション」で採用を勝ち取った経緯があります。
なぜ私は、募集もしていないのに突っ込んできた彼らを採用したのか?
実務の先にある、もう一つの成功事例
店舗売却を成功させたオーナーが、なぜ不動産実務の世界へと足を踏み入れることになったのか。そこには、店舗売却にも通じる「自分という商品の価値を最大化するロジック」がありました。
募集枠ゼロの壁を突破し、自ら需要を創り出した彼らの「アクション」と、私が確信した「営業の真理」については、以下の後編記事で詳しく解説しています。ビジネスにおける「逆転の発想」を知りたい方は、ぜひ続けてお読みください。
▶ 詳しくはこちら
求人など出していない。自ら門を叩いてきた2人を採用した「自分を売り込む営業の真理」【後編】
この記事の監修・執筆
(株)FIJ 営業本部長 / 岩井 義浩
元上場ノンバンク支店長(金融歴5年)、不動産サブリース実務15年。
「感情論ではなく、数字と法律でオーナーを守る」が信条のアナライザー。
年間200件以上の店舗査定 and 撤退相談を行い、AIを活用した適正な出口戦略を提案している。

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