営業本部長の岩井です。
先日、日常の業務や交渉における「意思疎通の齟齬」と、そのリスクヘッジについて、X(旧Twitter)で以下のポストをしました。
みなさんは、感じたことがないでしょうか。
— (株)FIJの中の人|サブリース歴15年の営業本部長(元ノンバンク支店長) (@FIJ_eigyou) March 28, 2026
最近、こちらの意図を明確に伝えたつもりでも、相手に正しく伝わっていないことが多いと感じることはありませんか。
当社の社員やお客様とのやり取りでも、こうした意思疎通の齟齬がトラブルの火種になることがあります。…
画面上では文字数の関係で途切れていますが、このポストの続きで、私は「自分の文章が相手にどう伝わるか、送信前にAIへ入力してテストさせている」という実務の取り組みを紹介しました。
実は、この投稿の下書きを作っている最中に、非常に面白く、かつ示唆に富んだエラーが起きました。
私が「営業における国語力(相手の心象を測る力)の重要性」について書いた文章をAIにテストさせたところ、AIは「私が相手の国語力不足を嘆いている」と、私の真意を見事に読み違えたのです。
最新のAI自身が行間を読み違えるという事実こそが、「意思疎通の齟齬はいとも簡単に起きる」という最大のエビデンスです。AIですら勘違いするのですから、欲や感情、そして「自分の立場」が絡む人間の相手ならなおさらです。
日常のコミュニケーションなら笑い話で済みますが、これが不動産売却やM&Aの実務となると、内容をふわっとさせたまま進めた結果、いざ契約書で明文化した際に致命的なトラブルの火種になります。今回は、この「行間を読む」ことの恐ろしさと防衛術について、実務の現場から深掘りします。
実務の修羅場:「じゃあ300万で」の言葉に潜む、構造的な罠
不動産実務において、この「行間を読ませる」曖昧さがどれほど危険か。店舗の造作譲渡代金の値下げ交渉を例に出します。
マイソク(募集図面)は総額表示が基本のため、買い手が見るスタートの数字は「440万円(税込)」です。当然、買い手はその後の交渉もすべて「税込ベース」で考えます。
一方で、売り手(オーナー様)は常に「自分の手残り」をベースに考えるため、我々業者とは「400万円(税別)」の感覚で話を進めています。
ここで激しい値下げ交渉があり、双方が譲歩の末に「じゃあ、300万で手を打ちましょう」と着地させたとします。
- 買い手の解釈:マイソクの表記に引っ張られ「(税込で)300万円まで下がった」と解釈。
- 売り手の解釈:自分の手残りルールに引っ張られ「(税別で)300万円で耐えた」と解釈。
「300万円」という言葉で合合したつもりが、実際には消費税30万円のズレが生じています。この爆弾を抱えたまま進み、いざ契約書を作る土壇場で「話が違う」と修羅場と化すのです。これは単なる個人の勘違いではなく、立場の違いが生む「構造的なバグ」です。
解決策:送信前の「AIによる複数解釈・抜け漏れチェック」
こうした泥沼を防ぐため、私は部下に対し、重要な交渉メールの文章を「送信前にAIへ入力し、事前のテストをさせる工程」を設けています。
元ノンバンク支店長として数多くの融資案件を差配してきた経験から言えるのは、トラブルの9割は「言葉の定義の甘さ」から始まるということです。
実務で使える「解釈テスト」プロンプト
指示プロンプトは至ってシンプルです。
「この文章を読んで、複数の解釈ができる曖昧な部分(行間を読ませている部分)や、数値の定義の抜け漏れがあれば具体的に指摘して」
この指示で自分の文章をテストさせれば、AIは高確率で「その300万円というのは税込ですか?税別ですか?」と指摘してきます。AIからの指摘があった場合は、意図が正しく伝わっているか相手に再度確認させ、ビジネス文書を誰にでも誤解なく伝わるレベルまで落とし込みます。
実はこれ、当ブログで公開している「賃貸借契約書のAI異常検知プロンプト」の設計思想と全く同じです。
▶関連記事: 【全公開】店舗の賃貸借契約書をAIで5分チェック。実務家が使う「異常検知プロンプト」と罠の防衛術
契約書の完成品をチェックするのと同じように、交渉途中の「自分の言葉」もAIという客観的なセンサーにかけるのです。推測を排除し、分からないものは「分からない」とアラートを出させることで、見えない赤字やヒューマンエラーを防ぐ防波堤となります。
結論:相手に「行間」を読ませてはいけない
ビジネスにおいて、言葉の定義の曖昧さはお互いの首を絞めます。
送信前にAIのテストにかけ、推測を排除して事実を明文化する。相手に行間を読ませない。これが、感情論ではなく、数字と法律でオーナー様を守る実務家のリスクヘッジです。
年間200件以上の査定・撤退相談を受ける現場の知恵として、ぜひ皆様も自衛策としてお試しください。
この記事の監修・執筆
(株)FIJ 営業本部長 / 岩井 義浩
元上場ノンバンク支店長(金融歴5年)、不動産サブリース実務15年。
「感情論ではなく、数字と法律でオーナーを守る」が信条のアナライザー。
年間200件以上の店舗査定 and 撤退相談を行い、AIを活用した適正な出口戦略を提案している。
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